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近年、接触冷感素材は衣料品から寝具まで幅広く浸透し、その性能を示す指標として「qmax」という言葉が一般にも認知されるようになりました。
qmax値とは、肌が生地に触れた瞬間の最大熱吸収速度を示すものであり、数値が大きいほど冷たく感じられることを意味します。
特に快適性や熱対策が重視される繊維製品の研究開発において、qmaxの正確な評価は極めて重要です。
しかし、この指標が何を意味し、どのような規格に基づき、どのように正しい測定方法が行われるべきかについては、詳細に理解する必要があります。
そこで、本コラムでは、qmaxの基本的な定義から、接触冷感性を評価するためのJIS規格の要点を詳しく解説いたします。
接触冷感とは、皮膚が布などの素材に触れた瞬間に「ひんやりと冷たい」と感じる感覚を指します。
この現象は、熱を奪う速さ、すなわち熱の移動量が鍵となります。
たとえば、同じ室温に置かれた木材と金属を触った場合、金属の方がはるかに冷たく感じられます。これは、金属が木材よりも熱を素早く肌から奪う(移動させる)性質を持っているためです。
接触冷感性を持つ繊維製品は、この熱移動の原理を利用して、着用者に涼感をもたらすように設計されています。
体温によって温められた皮膚が、より温度の低い素材に接触すると、熱は温度の高い方から低い方へ瞬間的に移動します。
接触冷感素材は、この瞬間に皮膚から素材へ移動する熱の量が大きく、かつ移動速度が速いように設計されています。
接触した瞬間に、皮膚表面の熱が素早く奪われることで、皮膚温度が急激に低下し、脳がこれを「冷たい」という感覚として認識するのです。
この熱移動の度合いを客観的な数値で評価するために、後述する最大熱吸収速度(qmax)が重要な指標として用いられます。
素材自身の熱拡散率や熱伝導率などの物理特性が、qmax値に大きく影響を与えることになります。
qmaxは、「最大熱吸収速度(または最大熱流束)」を意味し、皮膚が生地に接触したごく初期の瞬間に、単位面積あたりでどれだけの熱が素早く移動したかを示す指標です。
qmaxは、素材の接触冷感を定量的に評価するために広く利用されており、数値が大きいほど瞬間的に多くの熱が奪われ、人はより「冷たい」と感じることになります。
qmaxの単位としては、一般的に「W/cm2(ワット・パー・平方センチメートル)」が用いられます。
これは、1cm2当たりの熱の最大移動量、すなわち瞬間的な熱の流れの最大値を表しています。
日本において、繊維製品の接触冷感性を評価するための正式な試験方法として、「JIS L 1927」「繊維製品の接触冷感性評価方法」が2020年2月に制定されました。
本JIS規格は、カトーテックの試験機(KES-F7 サーモラボ)をベースに原案されました。中国の推奨規格「GB/T 35263-2017 テキスタイル-接触時の冷涼感の試験と評価」や台湾の規格「CNS15687, L3272 生地の瞬間冷感試験方法」も同様です。
「JIS L 1927」では、接触冷感性を表す特性値として、最大熱流束を定義しています。
この規格に基づき、一般財団法人カケンテストセンターなどでは、qmax値が0.100W/cm2以上であれば、接触冷感性の性能を有すると判断する基準を採用しています。
このJIS規格の試験方法は、熱源板(センサー)を室温より10℃高い温度に設定し、室温の試料(生地)に接触させた際の、ごく初期の熱流束(単位時間あたりに単位面積を通過する熱量)の最大値をqmaxとして測定することが定められています。
特に、測定の際には微分変換や一次遅れ要素フィルタを通すことが規定されており、これは脳が皮膚を通して冷たいと感じるまでの遅れを考慮に入れた、人体感覚との相関を重視した設計思想に基づいています。
qmaxの測定は、素材の機能性評価において極めて重要であり、その結果の信頼性は研究や製品開発の品質を左右します。
そのため、JIS規格に基づいた正確な測定が可能な専用の試験機が求められます。
KES-F7 サーモラボは、カトーテックの試験機「KES(ケス)」シリーズの一つで、JIS規格「繊維製品の接触冷感性評価方法」が行えます。
肌が生地に触れた時に、「温かい」「冷たい」と感じる皮膚感覚である「接触冷温感」を測定する試験機です。
夏向けの涼感・冷感のある寝装素材や、冬向けの接触温感のあるインナー素材などの評価にご活用いただけます。
KES-F7 サーモラボは、単にqmaxを測定するだけでなく、保温性や熱伝導率など、布の熱移動に関する多岐にわたる特性を定量的に解析することができます(※オプション)。
研究者の方々にとっては、接触冷感という単一の指標だけでなく、素材の持つ総合的な熱物性を評価し、快適性や機能性を深く研究するための基本ツールとなるでしょう。
「KES-F7 サーモラボ」について詳しくは、下記のページをご覧ください。
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「KES-F7 サーモラボ」を用いた導入事例も、ぜひご覧ください。
・冷感インナーの涼しさの評価
・冷感敷きパッドの接触冷温感の評価
・冷却シートのひんやり感の評価
・乾燥した洗濯物の触感評価
・食パンのしっとり感の評価
・浴室の床の接触冷温感の評価
・化粧品塗布後の清涼感の評価
上記の「KES-F7 サーモラボ」と同様、「接触冷温感」を測定する試験機です。
試料の接触部分である熱板は、人が物に触れる感覚に合わせて荷重や接触面積が設計されているため、人の感覚に近い最大熱移動量を測定できます。
連続10回までの自動測定が可能です。測定操作は全てタッチパネル。測定条件も簡単に設定できます。
「KES-QM 接触冷温感試験機」について詳しくは、下記のページをご覧ください。

「KES-QM 接触冷温感試験機」を用いた導入事例も、ぜひご覧ください。
qmaxは、皮膚と生地が触れた瞬間にどれだけ熱が素早く移動するかを示す「初期熱流束の最大値」の指標であり、数値が大きいほど高い接触冷感性を示します。
繊維製品の研究開発においてはこのqmaxを評価指標とする「JIS L 1927」が基準となり、正確な温度差や圧力の制御、そして特定のフィルタ処理を伴う測定が求められます。
これらの機器を正しく活用し、qmaxの正確な評価を行うことは、研究機関における高機能繊維製品の研究および品質管理の推進において、極めて重要な役割を担っているといえます。
qmaxの測定に関するご相談は、カトーテックまでお気軽にご連絡ください。